2010年11月30日

あずきいろ − 小豆色




江戸にはじまる灰みの赤


伊豆沼という宮城県北にある水辺に
雁が飛来するころになりました。

夕暮れどきに雁を追いかけて
茜色に染まった空を背景に、群れ飛ぶ様子を撮るのに
立ち合ったことがあります。
このお菓子の情景は、それよりもっと遅い時間。
「月夜の雁」です。
この雁をかたどっている部分が、小豆色。

冬には寒さにそなえ
小豆粥を食べる習わしがあります。
赤い色が、けがれをはらうとされ
かつては1日と15日に
お赤飯をいただくこともあったようです。

それにならって、今年に入ってから毎月初め
1日の日にお赤飯を食すようになりました。
できあがったお赤飯をおひつに入れ
いただくだけで、あらたまった気持ちになります。

体にはもちろんですが
心にも、良いような気がします。




【小豆色】
赤小豆の実のような、くすんだ赤。このお菓子の雁に
あたります。小豆は、『古事記』にも見られるものの、
色名としては江戸時代から。小豆で染めたのかと思っ
たら、何で染められたのかも、よくわからないといいま
す。季語でいえば8月ですが、収穫は10月ごろ。12月
の冬至に食されることから、冬の色として紹介しました。

posted by mikk at 10:26| Comment(4) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月31日

あおもみじ − 青紅葉




色づきかけた葉のかさね色


夕紅葉、むら紅葉、下紅葉……
紅葉にまつわる季語はたくさんありますが
かさねの色目も、それに劣らず
初紅葉、青紅葉、黄紅葉、楓紅葉、
紅葉、櫨紅葉など、さまざま。
その字を眺めているだけで
移りゆく季節を感じられます。

「野路」と名づけられたこのお菓子、
柿をかたどっていますが
その色は照り映えるとまではいかず
まだ、おだやかな色。

かさねの色目でいえば、青紅葉です。
仙台ではちょうど今ごろの
色づきはじめた木の葉のようです。

寒暖の差が大きいほど
木の葉は赤みを増し
くだものは甘みを増します。

猛暑から秋へと急加速した今年は
木の葉の色も、くだものの味わいも
より深まるかもしれません。
人としても、円熟みが増す
となるとよいのですが。




【青紅葉】
青と朽葉のかさね色。まだ色づいていない青葉と、色
づきはじめた木の葉、2色のかさねの色目です。平安
時代には紙の色として、鎌倉から室町時代の文献に
は狩衣の色に用いられたと記されています。ちなみに、
似た言葉に青楓がありますが、こちらは初夏の季語。
青紅葉は季語にはなく、秋にまとう色目になります。

posted by mikk at 23:27| Comment(2) | 神無月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月30日

こんじき − 金色




輝きをはなつ黄色


白秋とも金秋ともいわれる、秋。
それは五行思想からきている呼び名です。

その色にちなみ、秋に吹く風をあらわした
「金風」という銘のお菓子です。

このお菓子の色は、まばゆい金とは異なる
蒔絵の沈金を思わせる、底光りするような色。
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』にあらわされたような
静けさのある美しさ
とでもいったらいいでしょうか。

乏しい光を受けて照り返すような色あいが
好ましくなります。

いま女性の間では
キラキラしたものが流行りですが
時には月明かりや蜜ろうの灯に照らされた
金色を見るほうが、心が静まる気がします。

そんな過ごし方のあう秋の夜長ですが
長月も、今日でおしまい。
明日から、また新しい月がはじまります。




【金色】
黄金のような光沢のある黄色。「こんじき」「きんい
ろ」「きんしょく」とも読みます。黄金色と同じ色。直
接的な色名をいわず、似た色の山吹色といわれる
こともありました。金色に近い色みには、ほかに金
茶もあります。それは、江戸時代になって生まれた
四十八茶百鼠の中の一つで、濃い赤みの黄色です。

posted by mikk at 23:05| Comment(2) | 長月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月31日

せみのは − 蝉の羽




蝉の羽を模した夏のかさね色


虫の音にかわる時季になっても
夏の名残のように
まだ蝉が鳴いています。

その蝉の羽をモチーフにした
2色によるかさねの色目を
「新涼」というお菓子に見つけました。

あまりにも直接的な色名なので
お菓子の色にあてるのは気がひけますが
この端正な色や形と
色名がしっくりくる気がして
紹介することにしました。

蝉の色といえば、茶系だとばかり思っていましたが
この色目には、なぜか緑も含んでいます。
もしかしたら
クマゼミの羽化した色に
ちなんでいるのかもしれません。
涼やかな緑の羽をしているので。

このかさねの色目は平安時代からあり
夏の薄衣に用いられたといいます。
現代でも、さらりと素敵な着こなしができそうです。




【蝉の羽】
黒っぽい赤茶の「桧皮色」と、古くは「青」と表した緑
色、2色の組み合せです。かさねの色目の表に桧皮
色、裏に緑なので、お菓子の配色を上下にすると、よ
り本来の色合わせに近づきます。動物にちなんだ色
目は少なく、ほかには「玉虫色」があるくらい。色目が
残らなかったのは、その名も影響しているのでしょうか。

posted by mikk at 23:56| Comment(4) | 葉月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月31日

そらいろ − 空色




晴れわたった空の明るい青


ザブーンと打ち寄せる大波、小波の
「荒磯」です。
和菓子では、観世水や流水の水紋であったり
青海波の整然とした波であったりが多いのですが
こちらは、荒々しく猛々しい
浮世絵の高い波を思わせます。

どちらかといえば、穏やかな波が好みですが
このお菓子を見ていると
ただただ静かな波が続くより
ときに大波、小波、水しぶきとあったほうが
いいのかも、と思えてきます。

いかに波を乗り越えていくかに
人生の機微を見出せる気がするから。

とはいえ、それほど心に余裕があるわけでもなく
まだまだ波間で右往左往。
あっちに揺られ、こっちに揺られ
平常心を保てないのが常ですが。

その都度、目の前にある波を越え
ふと振り返った時に
楽しかったと思えるような
そんな日々を過ごせればと思います。




【空色】
晴れた空の色。水色より紫がかっています。色名と
しての歴史は古く、平安時代から使われていた色。
『源氏物語』にも、源氏が歌をしたためたのが、空の
色をした唐の紙。時代によって色も異なるのか、江
戸後期の空色は紫みの色、平安時代は薄墨色と
いう説も。天色を「そらいろ」と読む場合もあります。

posted by mikk at 23:26| Comment(8) | 文月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月30日

みどりいろ − 緑色




草木のみずみずしい葉の色


笹の葉にくるまれたお菓子を
見かけることはよくありますが
こちらは笹の葉をかたどったお菓子「笹衣」です。

このお菓子にすい寄せられたのは
たぶん、すーっと幾筋も引かれた葉脈のせい。

笹の葉を手にしたときは決まって
葉脈にそって切りこみを入れ
交差させて笹舟を作っていました。

それが、数年前に笹の葉を手にしたとき
すっかり作り方を忘れてしまっていることに
気づきました。

葉っぱに触れることより
キーボードに触れることのほうが多い、この頃。
あたり前にできていたことが
あれこれ抜け落ちていることが
少なくありません。

緑児(みどりご)のような感性でいるには
みずみずしい緑に触れることが
大事な気がします。




【緑色】
青葉のような色。青と黄の中間にあたります。平安初
期の年中行事を記した『延喜式』にも、深緑、中緑、青
緑など、緑の色名が出てきます。ですが、一色で染め
たのではなく、藍と黄系統の色を混ぜた色でした。「緑」
の語源は、みずみずしい新芽や、緑の羽色をしたか
わせみの古名「そにどり」に由来するとも言われます。

posted by mikk at 23:52| Comment(2) | 水無月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月28日

うすあさぎ − 薄浅葱




明るく青みがかった青緑色


今日も暑い日でした。
お菓子も、夏らしく
白波も涼やかな「さざ波」です。

この海にあたる色が、薄浅葱になります。
実はこの色、かつて如月の時季に
男びなさまの衣の色として紹介しています。
http://www.k2.dion.ne.jp/~miks/wawa/toki_fuyu/toki_0205.html

ですが、本来は夏の色。
ようやく、ふさわしい夏の時季に
見つけることができました。

爽やかな色と意匠。
眺めているだけで
すーっと暑さが引いていくようです。

たしか今年は冷夏と言われていましたが
この調子なら、夏らしい天候に恵まれそうです。

日焼けが気になるところですが
晴れわたった空のもとに広がる海を眺めているだけで
心もゆったり、のんびり休息できます。
気分は早くも夏休みといったところです。




【薄浅葱】
葱の若葉のような浅葱色が、淡く明るく青みがかったの
が「薄浅葱」。淡く緑がかれば「水浅葱」です。浅葱色は
平安時代からあった色名。江戸時代には、地方出身の
侍が羽織の裏地に使っていたため野暮とされ、明治にな
ると一転、化学染料で鮮やかを増し、芸者衆に流行した
新橋色が生まれます。浅葱色と新橋色に縁のある色です。

posted by mikk at 20:19| Comment(2) | 水無月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月20日

わさびいろ − 山葵色




清流から生まれるくすんだ黄緑


島根の実家では
お刺身となると父が家の裏手から
わさびを採ってきて
すりおろして薬味にするのが
いつものことでした。

子どものころは
自生しているのだとばかり思っていましたが
父が育てていたのだと知ったのは
ほんの数年前。
食いしんぼうは、父の代からのようです。

そんなわさびの香りを思い出したお菓子が
「あじさい金団」です。

咲きはじめのあじさいを思わせる色あい。
きらめいているのは雨露でしょうか。

あじさい、あじさい、と思って眺めても
この色からは、やっぱり
わさびと澄んだ川を思い出します。




【山葵色】
すりおろしたわさびのような、少しくすんだやわらかい
黄緑色。青磁色にも近いと思っていたら、高麗青磁に
似た色でした。わさびは、奈良時代から文献にも登場
している日本原産のもの。水の中で育てる水わさび
と、畑で育てる畑わさびがあります。4月の季語から
考えると、時季的に少し遅れての紹介になりました。

posted by mikk at 21:15| Comment(4) | 水無月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月31日

うすふじいろ − 薄藤色




江戸にはじまる淡い藤色


その姿は凛とした女性のようなのに
名前はいかつい「てっせん」です。

鉄仙とも鉄線とも書く、その名。
どうして、そんなに猛々しい名になったかといえば
つるが鉄線のように強いからだそう。

江戸初期に、中国から渡ってきたもので
花に見えるのは、がくの部分です。

6枚のものが鉄線で、8枚のものが風車。
それらを総称して、クレマチスといいます。

このお菓子は、てっせんを模した練りきり。
1枚ごと寄り添わせているのかと思ったら
わずかにつながっていました。

その中には、あたたかい色のくるみ餡。
見ためも、味わいも
ちょっと意外で楽しめます。




【薄藤色】
淡い青みの紫である藤色を、さらに淡くしたのが薄
藤色です。花の色としては平安時代から見られま
すが、色名としては江戸時代からとされています。
似た色に、薄色(うすいろ)と半色(はしたいろ)が
あります。その違いは、薄色はやや灰みがかり、半
色は薄色よりやや濃く赤みがかっているところです。

posted by mikk at 23:25| Comment(4) | 皐月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月30日

つつじいろ − 躑躅色




花色をうつした鮮やかな紫みの赤


庭先にあるつつじの
小さなつぼみが日増しに大きくなり
少し口を開いたかと思っていたら
その翌日には、ぱっと花びらを広げていました。

それも、燃えるような花色で。
こんなに、まぶしいほどに咲く花だとは
今まで、あまり気がつきませんでした。

つつじといえば、恋の歌として
古今和歌集に詠まれています。

思いいづる ときはの山の岩つゝじ 言はねばこそあれ 恋しき物を
(思いだす常盤山の岩つつじ、言わないからこそ恋しいものを)

そんな言うに言えない恋心を
ちらりとのぞかせているようなお菓子を見つけました。
「岩根つつじ」です。

五月には、つつじのお菓子が
さまざま並びますが
どれも本来のつつじ色より、やさしい色あい。
鮮やかさをちょっと抑えた
おいしい色になっています。




【躑躅色】
つつじの花のように、紫がかった鮮やかな赤い色。お
菓子の、花色の部分にあたります。平安時代から、か
さねの色目として身につけられた「躑躅」は、黒味がか
った赤紫の蘇芳色と、冴えた黄緑の萌黄色の組み合
わせでした。躑躅のかさねと、躑躅のひと色。同じ色
名でも、時代によってずいぶん印象が異なるようです。

posted by mikk at 15:11| Comment(0) | 皐月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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