2011年09月25日

くがつぎく − 九月菊

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白菊と黄菊を表すかさね色


「九」という数字。
これほど、人によって印象の異なる数字も
めずらしい気がします。

ある人は、苦しみを連想し
ある人は、めでたい九がふたつも並ぶ
九月九日の重陽の節句を思い起こす
ハレとケをあわせ持つ数字です。

その重陽の節句にちなんだ色名が、九月菊。
なぜ、菊なのかといえば
その日、観菊の宴が催されていたから。

中国の故事にならい
日本でも奈良時代から宮中で
菊の花を愛でる宴が行われていました。

菊の花を浮かべた酒を飲み
その前夜には、
花が夜露にぬれないように綿を着せ
翌朝に、夜露と香りをうつしとった綿で身体を拭くことにより
若さが保てると思われていました。

菊月ともいわれる九月は
別名、夜長月ともいわれます。

雲間にうかぶ月を見上げながら
このお菓子「月の宴」をいただきつつ
ゆっくりと過ぎゆく時間に浸るとしましょう。




【九月菊】
白菊と黄菊を思わせる、白と黄によるかさねの色目で
す。重陽の節句にちなんだ色目ですが、平安文学に
は見られないため、中世以降に生まれたと考えられ
ています。この色あわせを身につけるのは、9月だけ。
秋にかけて、菊にちなんだかさねの色目は多く、蕾菊、
葉菊、花菊、白菊、紅菊など、10種類にもおよびます。









posted by mikk at 22:01| Comment(0) | 長月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月30日

きくがさね − 菊重

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白菊のうつろいを表すかさね色


葉月も、あと一日。

いっときは、急に肌寒くなった気候に
早くも秋がやってくるのかと思ったら
いまも隣のお寺の木立では、セミがかまびすしく鳴き
まだまだ夏は終わらない
と言っているかのようです。

かと思えば、こちらの庭先には
秋明菊が開きはじめました。
夏と秋が、とけあうこのごろ。

お菓子は「桔梗(ききょう)」。
秋の七草のひとつです。

萩、尾花、葛、なでしこ、おみなえし、藤袴、朝顔。
この朝顔が、桔梗といわれています。

ふた色あったこのお菓子を並べてみると
その色あわせは
秋らしい白菊を思わせる
かさねの色目へと姿をかえました。




【菊重】
白と淡紫のかさねの色目。秋に身につけられる色あい
です。似た配色に、蘇芳菊(すおうぎく)があります。
こちらは白と濃い蘇芳色(黒みをおびた赤系の色)の
かさなり。白菊が霜にあい、蘇芳色にうつろう様子を
表した色目とされています。だとすると、この菊重は、
夜露にぬれた白菊をあらわしているといえそうです。








posted by mikk at 12:01| Comment(4) | 葉月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月18日

びゃくろく − 白緑

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白みがかった淡い緑


ずいぶん薄れてきてはいても
その土地、土地に、受け継がれてきた
色彩文化があります。

それは衣食住にわたり
ごく自然に暮らしの中にあって
見過ごしてしまいそうなほど。

このお菓子「緑陰」は
見る人によっては
抹茶風味を想像されるかもしれません。

ですが、この時季、東北でこの色といえば
枝豆をすりつぶした、づんだです。
仙台の和菓子屋さんには
それぞれ風味を生かした、づんだ羹(かん)が並びます。

はじめて、づんだを見たのは
高校まで過ごした、島根でのこと。
たまたま見かけた同級生のお弁当に
入っていたのが、づんだあんのおはぎ。

なんだろう……。
小豆あんのおはぎしか見たことがなかった当時
とても不思議な感覚だったのを覚えています。

それが、仙台に暮らすようになり
づんだの控えめな甘さと
こまかい粒々の食感がくせになり
いまでは、小倉よりもまず、づんだ。

食の色彩文化のもとにあるのは
その土地らしい、おいしさなのでしょう。




【白緑】
文字通り、白にちかいごく薄い緑色。顔料で
ある緑青(ろくしょう)を、最も細かい粒子にす
ると白みがかった白緑になります。飛鳥時代
に中国から伝わった絵の具で、仏画や仏像、
古い建築物や彫刻の彩色に用いられました。
現在でも、日本画などで見ることができます。








posted by mikk at 20:09| Comment(2) | 葉月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月29日

たちばなのかさね − 橘のかさね

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みかんのような橘の実を表す、かさねの色目


このところの気温差のせいか
夏カゼをひいてしまいました。

せきと、微熱で、
めずらしく食欲もなく
ふだんなら軽くたいらげてしまうお菓子も
半分ずつ、しおらしくいただいています。

といっても、この「日向葵(ひまわり)」も
ちゃんといただいているわけですが。

さっぱりした味を求めているせいか
この色から思い浮かべるのは
やっぱり、みかん。

わらしべ長者にでてくる人のように
みかんで、のどの渇きを潤したくなってきます。

ひまわりの花が元気な空気をくれると
わかってはいても、
みかんが消化に悪いとわかっていても
今は、みかんの心境なのでした。




【橘】
コウジミカンの古名である橘。その実を表した、濃朽
葉と黄による、かさねの色目です。似た色目に「花橘」
もあり、こちらは朽葉と青(緑)のかさね。花橘を身に
つけるのは、花の咲く前の五月。不思議なのは、この
橘の実は秋なのに、夏の色目になっていることです。
季節の移ろいが、今より早かったということでしょうか。








posted by mikk at 19:39| Comment(0) | 文月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月28日

きはだいろ − 黄檗色

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古代より伝わる鮮やかな黄色


七月も半ばを過ぎると
仙台の小さな店でも七夕飾りを
手づくりしはじめます。

それは、通りにたなびく大きな飾りではなく
店先を彩る、かわいらしいもの。

薄紙を幾重にもかさねて折りたたみ
広げた花を丸い竹かごにつけると、くす玉に。
吹き流しをつければ、できあがりです。

仙台の藤崎百貨店には
今年は、白い七夕飾りが、すでにお目見え。
地域の河北新報社には
七夕飾りにするための折り鶴が集まっているといいます。

お菓子の「七夕」にも、吹き流しが揺れています。
この星の部分が、黄檗色。

まばゆいほどの色が
きらきらとした希望の光のようにも見えてきます。

人と人をつなぐのも
哀しみを昇華させるのも、まつり。
ひとりでも多くの方に見ていただきたい
仙台七夕まつりです。




【黄檗色】
ミカン科の高木「黄檗」の内皮で染めた、鮮やかな黄
色。いまでも草木染めで、よく用いられる染料です。
防虫効果があり、写経用の紙を染めるのにも使われ
ていました。正倉院に伝わる黄紙や黄染紙も、黄檗
で染められたと考えられています。薬効もあり、漢方
では整腸剤「黄檗(おうばく)」として知られています。








posted by mikk at 18:54| Comment(0) | 文月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月30日

あさぎいろ、うすあさぎ − 浅葱色、薄浅葱

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青みの葱の色と、さらに薄い色


淡々として
はかなく消えゆく泡をあらわした
「うたかた」です。

子どものころ過ごした家のすぐ前には川があり
ときに水かさを増し、
母屋の床上まで浸すことがよくありました。

そんなときは、裏山の中腹にある小さな土蔵の二階に上がり
ろうそくを灯して、川が静まるときを待ちました。

薄暗がりのなかで目にしたのは
土人形や行燈、蓑など
暮らしから遠ざかったものたち。
今思えば不謹慎なことですが
子どもにとっては楽しいひとときでもあったのです。

だからでしょうか。
今でも、消えゆく文化に意識が向きます。

岩手から福島まで港をめぐり
漁師さん、船大工さん、港町の方々が
とつとつと話聞かせてくださった
船玉のこと、出初め式のこと、祈りのこと。

経済的な復興はもとより
港文化が泡と消えぬよう願うばかりです。




【浅葱色、薄浅葱】
かさねの色目に見かけないのが意外なほど、美しい配
色。浅葱色と薄浅葱による、水の泡を表したお菓子です。
緑をふくむ水色より濃い青が、浅葱色。『源氏物語』にも
登場する伝統の色です。淡いほうが、薄浅葱。どちらも、
青みに傾いた色あいです。逆に、緑みに傾いたのが水
浅葱。字面に引きずられて、ちょっと混乱しそうですが。








posted by mikk at 23:49| Comment(4) | 水無月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月17日

ゆりのかさね − 百合のかさね

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姫百合をあらわす夏色のかさね


はじめてわが家を訪れた義父が
両手いっぱいに抱えていたのが、白百合でした。

ちょっと照れたように、はいと手渡された白百合は
言葉ではない想いをいただいたようで
うれしくて、もったいなくて、とてもありがたかった。

私にとって百合といえば、その白百合だけれど
かつて日本で百合といえば
姫百合の色だったようです。

この「さくらんぼ」の色のかさなりが
姫百合をあらわす、かさねの色目。
『古事記』や『万葉集』に見られる百合も
白百合ではなく
このような夏色だったかもしれません。

7月の季語にもなっている百合は
これからの時季が見ごろ。
仙台からちょっと足をのばして
一迫ゆり園で
色を感じるのもよさそうです。




【百合】
赤色と朽葉色による、姫百合をあらわすかさねの色
目。夏の時季に身につけられた色あいです。といっ
ても、平安時代には登場せず、室町時代に著された
『胡曹抄』によれば、その時代にもあまり身につけら
れていなかった様子。元気のでる愛らしい配色です
が、残念ながら流行とまではいかなかったようです。









posted by mikk at 11:43| Comment(0) | 水無月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月31日

いろいろ − 色々

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黒みの紅がしめる、とりどりのかさねの色目


梅雨が近づき、わが家の庭では
小さな粒を集めたような
あじさいのつぼみが見られるようになりました。
もう少しすると、七変化のはじまり。

七変化といえば
ヤマトナデシコと口ずさんでしまうのは
ある一定の世代でしょう。

この言葉は、どこかおどろおどろしく
忍術や妖怪が浮かんでくるけれど
あじさいの別称です。

開花して花色を変えていくことから
七化けとも、七変化とも、呼ばれています。

このお菓子は、「七変華(ななへんげ)」。
読みと字をわずかに変えるだけで
やわらかく華やいだ印象のあじさいへと変わります。

色とりどりいただいた下には
黒く紅い蘇芳色。
色のとりあわせで紹介しているので
これが、ひと色、ひと色、かさなったところを
想像していただければ幸いです。




【色々】
淡い紫の「薄色」、黄緑の「萌黄」、「紅梅」、「黄」、
黒い紅色の「蘇芳」、「紅」の6色による、かさねの
色目です。このかさねの色目は、桜躑躅(さくらつ
つじ)とも称して、「桜」「桜萌黄」「蒲桜」を合わせた
こともあるようです。11月ごろから春まで身につけ
られた色。今回は少し遅れての紹介となりました。







posted by mikk at 23:08| Comment(0) | 皐月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月22日

ふじねず − 藤鼠

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灰みがかった藤色


うど、たらのめ、ふきのとう。
独特の香りや苦み、渋みがいいと
心から感じられるようになってきました。

味覚と視覚の好みは似てくるのか
ここ最近はとくに
渋みのある色に、きゅーんと引き寄せられます。

お菓子も、こんな渋みのある色に出会うと
本当にうれしくなります。

 渋いという如き、美への標準語を持っている国民は
 東洋にも他にはない
と記したのは、民藝の概念を見出した柳宗悦。

そんなに優れた文化のかたすみに
はたして、いるのかどうか。
たんに好みといえなくもないけれど
このお菓子「花しょうぶ」を見て
しっくりくるのを感じました。

澄んだ渋みといったらいいか。
なんとも、おだやかな気持ちになってきます。




【藤鼠】
灰色をふくんだ、やわらかみのある藤色。江戸後期に
流行した「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)」
のひとつです。茶系と鼠色系それぞれに微妙な色彩
の違いから生まれた多くの色は、粋な色として親しま
れています。藤色にちなんだ渋みのある色には、薄藤
鼠や、灰みがかった青紫色の藤納戸などもあります。









posted by mikk at 18:44| Comment(0) | 皐月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月30日

うすはなざくら − 薄花桜

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淡く紫がかった青


かわいい千鳥に見えますが
この時季なので、「ほととぎす」です。

葉桜のころを迎え
お菓子には夏を代表するほととぎすが
並びはじめました。

「春の花 夏ほととぎす 秋の月 冬雪さえて冷しかりけり」
と詠んだ道元禅師。

ほととぎすの名はよく目にしても
最近は、その声をきくことはあまりありません。
身近な鳥といえば
ときおり塀の上をじっと見つめるネコの反応から
小鳥の訪れに気づくくらい。
花鳥風月を愛でるには、ほど遠い毎日です。

それでも、ふと庭先に目をやれば
ほんの少し花色を見せはじめたつつじのつぼみや
日々成長するぎぼうしの葉に
季節の移り変わりを感じます。

なにげない日常が
とても愛おしく思えるこのごろです。




【薄花桜】
桜の名がついていても、ひと色のときは、なぜか淡く
紫がかった青。薄い花色をあらわしています。このお
菓子でいえば、ほととぎすの色です。わかりやすいの
は、かさねた配色で見せる、かさねの色目のほう。同
じ「薄花桜」でも、白と淡紅をかさねて山桜の花の色を
あらわします。さて、このひと色の薄花桜は、なんの
花色をあらわしたものでしょう。興味をひくところです。








posted by mikk at 23:14| Comment(4) | 卯月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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