2013年11月30日

からちゃ − 唐茶

sakaematu2.JPG


中国茶のような黄みの茶色


岩茶を味わったことがあります。
中国の福建省北部にある武夷山という地域の
岩山で育ったお茶の木から摘みとった茶葉で
つくられたものです。

その武夷茶は、明の時代から
皇帝への献上品だったとか。
烏龍茶の製法のもとになったお茶でもあります。

小さな中国茶器でいただいた岩茶は
一煎、二煎、三煎と、そのつど異なる香り。
繰り返し、繰り返しお湯を入れても
お茶の色がちゃんとあり
いったい何煎まで
色が出続けるのだろうと思ったほどです。

このお菓子に、ぽつんぽつんぽつんと
3滴落とされた色あいが
その岩茶の色に似ているのです。

お菓子は中国にちなんだものではなく「栄松」。
日本で古来から尊ばれている不老長寿の象徴で
新年に好まれる意匠です。

霜月に見つけた松のお菓子。
今年はクリスマスより先に
お正月に出会えた気分です。




【唐茶】
黄みがかった茶色。「唐茶」と表す場合と、「枯茶」
と表す場合があります。読み方はどちらも“からちゃ”。
戦国時代から身につけられていたと考えられる色あい
です。唐は中国を表す言葉。この色は、中国から伝わ
ったお茶にちなんだ色なのでは、と考えられています。










posted by mikk at 21:49| Comment(0) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

かれの − 枯野


kurimoti akine2.JPG


冬枯れの野をあらわす黄と淡緑のかさね色


草木が黄枯れた野は
もの寂しく感じられるように思いますが
冬の暖かい日に
冬枯れの景色を見に出かけ
お酒を酌み交わす楽しみもあったようです。

それは、何事も楽しみに変えてしまう
江戸の人たちの過ごし方。

その冬枯れの野にちなんだ配色が
このお菓子の色あいなのですが
見ためには、いまにも香りそうな
柚子がかたどられています。

口にしたら、きっと柚子の香りが広がるはず
と思っていたら、まったくの予想外でした。

ほんのり甘みのあるおもちには
きざまれた栗が散らされ
「粟もち 秋音」の名にふさわしい
秋の食感でした。




【枯野】
黄と淡い青(緑)の配色。雪や霜によって黄枯れ
ていく野を表わす色あわせで、『枕草子』に登場
しています。冬の装いにとり入れられた色です。
似た配色の「枯色」は、淡香と青(緑)による配
色。ひと色による「枯色」もあり、こちらは草木
の枯れたような、やわらかい赤みの黄色です。










posted by mikk at 21:46| Comment(0) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月30日

くれないぎく − 紅菊

yabukoji.JPG




紅菊の花と葉をあらわすかさね色


ある年のお正月。
父と母と出かけた出雲民藝館の庭先で
目にとまった赤い実。

南天でも千両でも万両でもない赤い実は
母から「藪柑子(やぶこうじ)」だと教えられました。

いっしょにまわった足立美術館も温泉もよかったけれど
意外に覚えている旅先での出来事は
そんな、何気ないやりとりです。

親子で旅に出る機会は、なかなかありそうでなく
最近は、それぞれで過ごすお正月になっています。

この時季、和菓子屋さんに並ぶ「やぶこうじ」を見ると
出雲で見た、あの赤い実を思い出します。
帰りの車中で撮った、父と母の笑顔とともに。

このお正月、父と母はどんなふうに過ごすのだろうと
少々気にかかりつつ
いよいよ明日から師走。
年明けまで、日々が走り抜けていきそうです。




【紅菊】
紅菊の花と葉をあらわす、「紅」と「青」(かつて緑
のことを青と表現していました)の二色によるかさ
ねの色目。中国から伝わった菊は、平安時代にお
いて黄と白が主流でした。いまよく目にする紅菊は
品種改良されたもの。このかさねの色目も後世に
生まれたと考えられます。菊をあらわす色目は10
種もあり、すでに紹介した九月菊もそのひとつです。











posted by mikk at 23:52| Comment(0) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月30日

はじもみじ − 櫨紅葉

kogarasi.JPG


ハゼの紅葉を表わす黄と蘇芳のかさね色



とある店先に
水連鉢に泳ぐ金魚とともに
はらりと浮かんでいた紅い一葉。

風が運んできたいたずらを
そのままにしているのだそう。
そんな風情も、秋だけのもの。

初紅葉、紅葉、青紅葉、黄紅葉、紅紅葉、
櫨紅葉、黄櫨紅葉、楓紅葉、もじり紅葉、散紅葉……。

これらはすべて、かさねの色目。
こんなにも、日本の人は
紅葉を見つめてきたのですね。

自然にある緑色の多さはよく言われることだけれど、
紅の多さも、そうとうなもの。
だから錦繍と呼ばれるのでしょうが。

そんな染まりきらぬ11月の色。
ちょっと紹介が遅くなった
お菓子「木枯らし」です。




【櫨紅葉】
黒みがかった蘇芳(黒みの赤)と黄による、かさねの
色目。うるし科の櫨の葉が紅く染まった様子を表わし
たもの。同じ「櫨紅葉」にも、黄・淡朽葉・紅・蘇芳な
ど6色をかさねる色目もあります。櫨にちなむ色目に
は、朽葉と黄をかさねる「櫨」、黄・丹・朱など7色を
かさねる「黄櫨紅葉」など。身近な木だったようです。









posted by mikk at 23:56| Comment(0) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月30日

あずきいろ − 小豆色




江戸にはじまる灰みの赤


伊豆沼という宮城県北にある水辺に
雁が飛来するころになりました。

夕暮れどきに雁を追いかけて
茜色に染まった空を背景に、群れ飛ぶ様子を撮るのに
立ち合ったことがあります。
このお菓子の情景は、それよりもっと遅い時間。
「月夜の雁」です。
この雁をかたどっている部分が、小豆色。

冬には寒さにそなえ
小豆粥を食べる習わしがあります。
赤い色が、けがれをはらうとされ
かつては1日と15日に
お赤飯をいただくこともあったようです。

それにならって、今年に入ってから毎月初め
1日の日にお赤飯を食すようになりました。
できあがったお赤飯をおひつに入れ
いただくだけで、あらたまった気持ちになります。

体にはもちろんですが
心にも、良いような気がします。




【小豆色】
赤小豆の実のような、くすんだ赤。このお菓子の雁に
あたります。小豆は、『古事記』にも見られるものの、
色名としては江戸時代から。小豆で染めたのかと思っ
たら、何で染められたのかも、よくわからないといいま
す。季語でいえば8月ですが、収穫は10月ごろ。12月
の冬至に食されることから、冬の色として紹介しました。

posted by mikk at 10:26| Comment(4) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月30日

くるみいろ − 胡桃色




胡桃で染めた淡い褐色


ちょっと地味な色あいですが
ひと口いただいただくと
まったりとくるみ風味が広がる「志野羹」です。

この色には、見覚えがありました。
宮城県南部にある丸森町の丸森和紙です。
農家の副業として紙すきをしておられる
年配のご夫婦のお宅にうかがったとき
座敷に積まれた和紙の中に、それはありました。

くるみの渋皮を入れて散らした
淡い褐色の紙。
見ためはゴワゴワしていそうなのに
手触りはあたたかで柔らか。
いつまでも触れていたくなる
手すきの風合いがありました。

くるみ染めの紙は奈良時代から使われ
『源氏物語』の光源氏が明石の君に送った文も胡桃紙。

そう思うと、この色も
なんとも風流に思えてきます。
たまには胡桃紙に手紙をしたためる
というのも、よさそうです。




【胡桃色】
くるみの樹皮で染めた、くすんだ淡い黄褐色。秋
の深まりとともに実が黄色くなるくるみは、10月
の季語。かさねの色目にも胡桃色があり、実と葉
の色を表す「香色(やや赤い薄茶色)」と「緑」の
色合わせ。こちらは四季を通じて用いられました。

posted by mikk at 23:55| Comment(6) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月30日

こげちゃ − 焦茶




こげたような黒みの茶


ほっとする色と形の「宝柿」。
あんなに照りはえていた柿も
干し柿へと姿を変えてきました。

渋柿の皮をむき、枝を紐で結び、吊るしておけば
干し柿になるのだろうと思いはしますが
実際につくるとなると
きっと自分の不器用さに驚くことでしょう。

子どものころは、祖父が作っていました。
今のように果肉がとろりとしたものではなく
少々かための干し柿です。

白くふいた粉、子どものころはちょっと苦手でしたが
あれは、糖分によるもの。
柿霜(しそう)というのだそうです。
のどの痛みや口内炎にも効果があるとされ
江戸時代には、柿霜を集めて、大名に献上したのだとか。

そのような歴史を知ってのことでしょうか。
このお菓子のまわりにも、うっすら。
練りきりに粉をまぶしたものかと思ったら
ふんわりしたお餅でした。
寒さが増してきたせいでしょう。
お餅のお菓子もふえてきました。




【焦茶色】
黒みがかった茶色。こげたような色みをいいます。こ
のひと色だけでなく、濃い茶系すべてを焦茶というこ
ともあるため、神無月に紹介した檜皮色(ひわだいろ)
も焦茶のひとつといえるでしょう。焦茶は江戸時代に
生まれた色名で、東海道中膝栗毛にも登場します。

posted by mikk at 20:09| Comment(10) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月24日

うすがき − 薄柿




柿渋の赤みがかった渋色


明るめの色を身につけるほうではないので
小物だけでも少し色みのあるものをと求めたのが
この色みの財布でした。

だからでしょうか。
このお菓子を見たときも
すぐに、これと手にしていました。

「木枯し」という銘は
冷え性の身にとっては目にしただけでも
寒々とした感じを覚えますが
じっと見つめてしまったのは
この色だったからです。

西日本から仙台に移り住んだとき
家族や親戚から、よく尋ねられました。
仙台は、どれほど寒く、どんなに雪が積もるのか、と。
でも実際は、島根の実家のほうが
しんしんとくる寒さで、雪も積もります。

仙台の海風の冷たさをいう人もいますが
なんとなく、吹きすさぶというより、やや穏やかな感じ。
ちょうど、この色のような印象です。




【薄柿色】
赤みのある淡い柿渋の色。柿渋とは、青い渋柿から
とった液を発酵させた、赤茶色の染料・塗料のこと。
補強や防水、防虫効果から、友禅染などの型紙にも
塗られています。色でいえば、柿色には二つあり、柿
の実の黄赤色と、柿渋による赤茶色をいう場合があ
ります。薄柿色は、柿渋による淡く渋い色になります。

posted by mikk at 18:00| Comment(6) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月23日

きくちば − 黄朽葉




王朝人も好んだ黄みの落葉色


いつの間にか街も、すっかり秋の色。
はらはらと落葉が舞っています。
お菓子も晩秋を思わせる景色になりました。

色みは秋なのだけれど
なんだろうと近づいてみたら
黄朽葉のいただきに渡した枝に
柿がぽつんと残っています。

来年もまたよく実りますようにと
ひとつ残しておく、木を守るおまじない
「木守り(きまもり)」でした。

柿だけでなく、みかんや柚子など
実のなる木には、おなじ風習があるそう。
そういえば山菜採りでも
根こそぎ採らず、少し残しておくのがならい。
それは、いのちの連なりを考えてのことでしょうが
木守りの柿も、わけがあってのことでしょうか。

神さまへのお供えなのか
鳥たちとわけあうためなのか。
柿の実ひとつの情景にも
想いがあるものなんですね。




【黄朽葉色】
イチョウの黄葉のような色。朽葉色として茶がか
った赤黄もありますが、朽葉でも黄みがかったの
を黄朽葉、青みを青朽葉、赤みを赤朽葉と、清少
納言のころから呼びわけられていました。かさね
の色目にもあり、黄朽葉は黄と朽葉を重ねた配色。
晩秋から初冬にかけて身につけられた色みです。

posted by mikk at 18:45| Comment(6) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月10日

しかんちゃ − 芝翫茶 




中村芝翫ごのみの茶色


きゅっと固くとじた「まつぼっくり」。
このくすんだ茶は、粋な色として
江戸後期から好まれてきた色です。

とくに歌舞伎役者が好んだ色や文様は
その人ひとりで終わらず、代々引き継がれてきました。

この色も、そのひとつ。
初代中村芝翫となった
三代目中村歌右衛門が好んだものです。
いまの七代目の芝翫さんは
中村橋之助さんのお父さま。
華やかな世界にあっても、名や芸を継いでいくのは
かなりのご苦労があることでしょう。

とりたてて、しがらみのないほうが
気楽に、自由に、生きてゆけるもの。
好きなことを、好きなときに、好きなように。

肌寒くなってきたこの時季こそ
まつぼっくりが開いていくように
ちぢこまっている心と体を、ゆるゆるとほどいて
好きなことをたっぷりと楽しみたいものです。




【芝翫茶色】
くすみのある黄赤がかった茶色。江戸時代には
華美を禁じられたことから、その許された色調の
なかで、よりおしゃれを楽しむ色が町衆の間に生
まれてきます。それが「四十八茶(しじゅうはっち
ゃ)」。茶系に渋みのある色が数多く生まれました。

posted by mikk at 16:34| Comment(10) | 霜月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このページの上へ▲
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。