2013年09月30日

かじ − 梶


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萌黄と濃萌黄のかさね色


繊細で可憐な「はぎ」のお菓子。
けしの実が奥ゆかしくあしらわれたようかんで
栗あんをくるんでいます。

ようかんの萌黄色と
萩の葉をかたどった濃萌黄
そのふた色のかさなりが
梶をあらわす、かさねの色目です。

梶といわれても、さほど思い浮かばず
漆器に描かれていたのが、たしか梶の葉だったか。
柏の葉に似ていたのだったかと
うろ覚えの知識が、浮かんでは消える程度です。

梶と柏が共通していたのは
古くは、その葉を
食べものを盛る器がわりにしたことくらい。

ほとんど知らなかった梶の葉。
紙の原料であるとともに
その葉に詩歌を書いて
星の神への捧げものにしたという
風雅な習わしがありました。




【梶】
梶の葉色をあらわす、萌黄と濃萌黄によるかさねの色
目です。前回紹介した「初紅葉」は、萌黄と淡萌黄によ
るかさねの色目でした。2色のうち1色を変えるだけで、
あらわす植物さえ変わってきます。どちらも、秋に身に
つける色あい。ちなみに、淡萌黄と濃萌黄によるかさ
ねの色目は「蓬(よもぎ)」。夏に着用される配色です。












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はつもみじ − 初紅葉

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萌黄と淡萌黄のかさね色


宮城県の花は、宮城野萩。
仙台市の花は、萩。

萩に思い入れのある土地柄ゆえか
花が見ごろになる季節には
仙台の和菓子屋さんに
萩にちなんだお菓子が並びます。

たいていは、可憐な萩の花に見立てて
けしの実を散らすことが多いのですが
意外だったのが、この「こぼれ萩」。

お菓子の水無月を思わせる
存在感のあるういろう製です。

こぼれんばかりに咲く
白萩を表わしているのでしょう。
白小豆をぎっしりのせて
つややかな寒天で表面を覆っています。

食べごたえがありそうと思ったものの
口にしてみると、白小豆の風味がとてもよく
するすると口の中にほどけていきました。




【初紅葉】
かえでの葉を模した、萌黄と淡萌黄によるかさねの色
目です。春の時季のかえでの葉色を表わしていると思
われますが、紅葉にちなんだ色目として、後の時代に
生まれたのではと考えられています。ちなみに紅葉に
ちなんだかさねの色目には、青紅葉、黄紅葉、楓紅葉
などがあり、いずれも秋に身につけられる配色です。











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みるちゃ − 海松茶

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赤茶をふくむ海藻の色


赤松、黒松、五葉松。
松にはいろいろあるけれど
海松と書いて“みる”と読む
海藻の松もあります。

“みる”で海にちなむものといえば
すし種のミル貝が浮かびますが
それは、海松を食べているように見えることから
名付けられたとか。

海松そのものは、あまり見聞きしませんが
万葉のころ、盛んに歌に詠まれ
食されたといいます。
その海松色を、赤茶に傾けたのが海松茶。

このお菓子でいえば
へたの色にあたります。

渋みのある写実的なへたと
ういろうで味噌あんを包んだ、ぽわんとした実。

その取りあわせに、どことなくおかしみがあり
求めた「柿」です。




【海松茶】
赤茶がかった深い緑色。平安時代から身につけられ
た海松色は、浅い海の岩についた海藻の海松のよう
な色。江戸時代になって、四十八茶百鼠(しじゅうはっ
ちゃひゃくねず)といわれる茶色や灰色の系統が生ま
れ、その流行の茶をふくんだ色が海松茶です。同系色
には藍海松茶もあり、どちらも渋みのある粋な色です。











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2012年09月30日

くりかわいろ − 栗皮色

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赤みがかった濃い茶色


窯場をまわると
料理上手な奥さまによく出会います。

ご主人がつくられた焼物に
その土地のものでつくったお菜が並び
郷土食のお店かカフェかと思うほど。
少し年配の方になると
お手製のお菓子でもてなしてくださいます。

あるところでは、甘く炊いた大福豆をふわりとまとめた
鹿の子のようなもの。
あるところでは、豆皿にのった栗の渋皮煮。

それが、なんとも風味がよく
もうひとついただきたい気持ちを
ぐっと抑えるのに苦労しています。

栗の木がある実家では
その実はとても身近にありました。
秋になると送られてくる栗は
すぐに栗ごはんに炊けるようにと
母が皮をむいてくれたもの。
それがどんなに手間のかかることか
不肖の娘は、最近になって知りました。

このお菓子「丹波路」は
菓子職人さんが手間をかけて皮までかたどったもの。
皮から栗風味の餡まで
そのままおいしくいただけます。




【栗皮色】
栗の皮のような赤みの茶色。栗色や『源氏物語』の一
節に出てくる落栗色を、同色とする説もあります。一説
には、栗色は明るい茶色、落栗色はつやのない黒みの
褐色とする説も。同じ色調であることに変わりありませ
ん。似た色に、檜皮色があります。こちらは檜(ひのき)
の皮のような色、もしくは皮で染めた赤茶色のことです。

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2011年09月30日

しおんいろ − 紫苑色

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秋に咲く紫苑の花の淡紫色


しおん、紫苑。
その響きも、文字のたたずまいも
優美でしっとりとした女性が浮かびます。

まだ「和の菓 和の色」が形をなしていないころ
和菓子に日本の色を見つけたいと考えていたときから
ずっと紹介したいと思っていた色です。

紫苑は、秋の花。
この時季、淡い青紫の花をつけます。
そう、このお菓子「野菊」のように。

野菊はある特定の花の名ではなく、
野生の菊のこと。

平安時代のはじめには
中国から渡来していたという紫苑も
野菊のひとつです。

このお菓子の姿、形、色あいは
きっと紫苑を意識したもの。

「野菊も咲くまでは、ただの草」といわれ
咲いてはじめて、気づかれます。
その有りようも、惹かれるところです。




【紫苑色】
菊科の紫苑の花色をあらわす、淡く明るい青紫で
す。平安時代から好まれ、庭に多く植えられた花。
その色あいも愛され、『源氏物語』や『枕草子』にも
装いの色として出てきます。ひと色であわらす「紫
苑色」もあれば、紫と蘇芳(紫がかった黒みの赤)
の二色によるかさねの色目の「紫苑」もあります。









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2011年09月25日

くがつぎく − 九月菊

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白菊と黄菊を表すかさね色


「九」という数字。
これほど、人によって印象の異なる数字も
めずらしい気がします。

ある人は、苦しみを連想し
ある人は、めでたい九がふたつも並ぶ
九月九日の重陽の節句を思い起こす
ハレとケをあわせ持つ数字です。

その重陽の節句にちなんだ色名が、九月菊。
なぜ、菊なのかといえば
その日、観菊の宴が催されていたから。

中国の故事にならい
日本でも奈良時代から宮中で
菊の花を愛でる宴が行われていました。

菊の花を浮かべた酒を飲み
その前夜には、
花が夜露にぬれないように綿を着せ
翌朝に、夜露と香りをうつしとった綿で身体を拭くことにより
若さが保てると思われていました。

菊月ともいわれる九月は
別名、夜長月ともいわれます。

雲間にうかぶ月を見上げながら
このお菓子「月の宴」をいただきつつ
ゆっくりと過ぎゆく時間に浸るとしましょう。




【九月菊】
白菊と黄菊を思わせる、白と黄によるかさねの色目で
す。重陽の節句にちなんだ色目ですが、平安文学に
は見られないため、中世以降に生まれたと考えられ
ています。この色あわせを身につけるのは、9月だけ。
秋にかけて、菊にちなんだかさねの色目は多く、蕾菊、
葉菊、花菊、白菊、紅菊など、10種類にもおよびます。









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2010年09月30日

こんじき − 金色




輝きをはなつ黄色


白秋とも金秋ともいわれる、秋。
それは五行思想からきている呼び名です。

その色にちなみ、秋に吹く風をあらわした
「金風」という銘のお菓子です。

このお菓子の色は、まばゆい金とは異なる
蒔絵の沈金を思わせる、底光りするような色。
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』にあらわされたような
静けさのある美しさ
とでもいったらいいでしょうか。

乏しい光を受けて照り返すような色あいが
好ましくなります。

いま女性の間では
キラキラしたものが流行りですが
時には月明かりや蜜ろうの灯に照らされた
金色を見るほうが、心が静まる気がします。

そんな過ごし方のあう秋の夜長ですが
長月も、今日でおしまい。
明日から、また新しい月がはじまります。




【金色】
黄金のような光沢のある黄色。「こんじき」「きんい
ろ」「きんしょく」とも読みます。黄金色と同じ色。直
接的な色名をいわず、似た色の山吹色といわれる
こともありました。金色に近い色みには、ほかに金
茶もあります。それは、江戸時代になって生まれた
四十八茶百鼠の中の一つで、濃い赤みの黄色です。

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2009年09月30日

つちいろ − 土色




土のような赤茶色


芋を月にお供えすることから
芋名月ともいう、中秋の名月。
その日にあたるのが、2009年は10月3日のため
お月見のお菓子が並ぶのも、昨年よりやや遅め。
長月も押し迫っての「小芋」です。

芋といえば、月よりも先に浮かぶのが芋煮会。
山形の芋煮も知られていますが
仙台でも河原で豚汁をつくっていただく
秋の楽しみになっています。

豚汁に欠かせない里芋を
植え、育て、芋煮をつくって
観光客をもてなそうと活動している
女子校の同窓生の方々もいます。

先日、少し早めの芋堀りを見ていると
土の中からごろごろと出てきたのが
ちょうど、このくらいの小芋。

ほくほくあったかい芋煮を思い浮かべつつ
こちらは、こし餡の入った
ほんのり甘い小芋をいただきました。




【土色】
くすんだ赤みの茶色。しめった土のように黒み
をおびた茶色という説もあります。岩石などが
粉末になった土の色のことですが、憔悴した顔
色をあらわす表現にも使われます。土がつく色
名に黄土色もあり、こちらは赤みの黄色です。

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2008年09月30日

おみなえしいろ − 女郎花色




秋の野に咲く緑みの黄


秋の七草のひとつ
おみなえしを意識したのは
生け花のけいこの初日のことでした。

小花の可憐な花なのに
女郎花という名が
そぐわない気がしたのを覚えています。

ですが、女郎という言葉は
身分のある女性や若い女性のこともさすようで
花の姿は、うら若き女性の美しさにたとえられたといいます。

秋の野をあでやかに彩るこの花を
粟花ともいうのは
粟を散らしたようにも見えるからでしょう。

その花の色や形を、「みのり」のお菓子の
ちょうど中ほどに見つけました。

女郎花に見えたのは
稲穂で黄金色に染まった田を表したものだそう。
題材は違っても、黄色から赤茶色へと
景色を変える季節が近づいてきました。




【女郎花色】
緑がかった黄色。女郎花の花の色のことです。平安
時代からある色名で、『源氏物語』にも登場します。
かさねの色目にも「女郎花」があり、青糸と黄糸で
織った緑みの黄色と、青色をかさねた配色とする説、
青と萌黄をかさねた説と、いくつかの説があります。

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2008年09月29日

ふたあい − 二藍




ふたつの藍で染めた紫


日ごとに長くなる、秋の夜長。
長月という呼び名も、夜長月からきたものだそう。
冷えてきた外気に夜景もくっきり冴え
その空に月を探すことが多くなりました。

今日は新月で、残念ながら月は見えませんが
こんな日こそ、二藍の空に月が浮かんだ
「名月」をいただきつつ、夜長を楽しみたいもの。

このところ季節の変わりめのせいか
つい眠りに引き込まれそうになりますが
夜になるにしたがって目は冴え
また夜長を楽しむの繰り返しです。

その日の気分によって読む本を
どれにしようかと選ぶのも
うれしいひととき。

たまたま今日、手にした句集も
気づいてみれば『月を仰ぐ』。
意識せずに求めた本まで月にちなんでいたとは
自分でも意外ですが
星野立子の句で眠りにつくとしましょう。




【二藍】
赤みの紫。青みの紫とする説もあります。赤みから青み
まで幅が広いのは、藍と呉藍(紅花)のふたつの藍で染
めた色で、その合わせ方によって色あいが異なるためで
す。平安時代は夏に盛んに用いられた色で、年齢が若い
ほど赤みに、年を重ねるほど青みにしたとされています。

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2008年09月24日

からしいろ − 芥子色


からしのくすんだ黄


さわさわと揺れる「すすき」。
そのぴりりとした辛みの色をやわらげるように
「うさぎ」を並べました。

食べものでいえば
辛いものは、けっこう好きなほうですが
その辛みにも得手、不得手があります。

胡椒や唐辛子は多いくらいがちょうど良く
わさびはほどほど、からしは少なめ、というように。
年を重ねてますます好ましく感じる辛みもあります。
そのひとつが、山椒。

子どものころは、無くても構わず
むしろ、あっても使わなかったくらい。
それがいまでは、無いとものたりなく感じてしまいます。
辛みより、あの香りが癖になるのかもしれませんが。

そして、いつも
ひとすくい、ふたすくい
振りかけるたび思うのです
小粒でぴりりと辛い
そんな人になりたいものだ、と。




【芥子色】
渋みのある黄色。からし菜の種を粉末にして練
った、香辛料の色をいいます。からし菜は春に
黄色い花を咲かせますが、この色は香辛料とな
ってからの色。古くから料理に使われていたか
らしも、色名となったのは明治以降のようです。

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2008年09月20日

おいたけいろ − 老竹色




くすんだ灰みの緑


いまを盛りと咲いている萩を表した
「こぼれ萩」です。

仙台市の花が、萩で
宮城県の花は、宮城野萩。
通りの愛称にも宮城野萩がつけられているほど
ゆかりのある花です。

文楽の演目にも
思わず涙してしまう
伊達家のお家騒動をもとにした
「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」がありました。

いつになく萩の花が気になっていたせいか
今年は、ここにも、あそこにも、といった具合。
小さな花が群れるように
こぼれるように咲く姿は風情があり
古くから数多く歌に詠まれてきたのも
わかる気がします。

その情景をうつした、このお菓子。
渋みのある抑えた色みが、心にとまりました。




【老竹色】
くすんで灰色がかった緑色。竹の成長にあわせ
て、明るい緑の若竹色、青みの緑の青竹色、灰
みの緑の老竹色、黒みの茶の煤竹色となります。
これらの色は、どれも江戸以降に生まれたもの。
老竹色は大正ごろ生まれたとする説もあります。

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2008年09月12日

くちなしいろ − 支子色




もの言わぬ暖かみの黄


ぽっかり浮かぶ「秋月」を見ていると
いいことも、気になることも
まあるく収まる気がしてきます。

めいっぱい広がった丸から
ふと浮かんだのは、向田邦子さんの『字のない葉書』。
小学一年の末妹が疎開するとき
父親から自宅あての葉書を渡され
元気だったら丸を書いて送るようにと言われます。
まだ字を書けなかった妹から届く葉書は
最初は、はみだすほど大きな丸だったのに
だんだん小さな丸になっていくという話。

ひと筋の線で、くるりと丸を書くだけでも
その時々の心情があらわれるんですね。

ときに、言葉を尽くしても
もどかしい思いになることもあれば、
多くを語らなくても通じあうことがあります。

わかりあうために言葉はとても大切なものだけれど
大きくうなづくだけでいいときも
多い気がします。




【支子色】
かすかに赤みのさす濃い黄色。秋が深まったころ
熟す、くちなしの実で染めた色のことです。この実
は、熟しても口を開かないことから「口無し」と呼ば
れ、支子色のことを「言わぬ色」ともいいます。平安
のころ、皇太子が身につけた「黄丹(おうに)」の色
に似ていたことから、禁色にされたこともあります。

posted by mikk at 14:55| Comment(18) | 長月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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