2013年05月31日

あおむらさき − 青紫

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青みをおびた紫色


時間に追いかけられているとき
すっと救い上げ、解き放ってくれるのは
その日、その時にしか見ることのできない
花や葉の色、風のにおい。

いつもと変わらない道であっても
目にする光景は、そのたびに新鮮で
さわさわと新しい風が吹きぬけていくような
気持ちになります。

そんな気分にさせてくれる
もののひとつが、和のお菓子。

あっ今日はこんなお菓子に出会えた
もうこの季節がやってきたのだと
それまで頭をぐるぐると駆けめぐっていたことを
一瞬にして忘れさせてくれるのです。

ちょっと季節を忘れかけていた日々。

「あやめ」のお菓子が
いまの時季を教えてくれました。




【青紫】
青みがちの紫色。このお菓子「あやめ」と同じ
色名をもつ「あやめいろ(菖蒲色)」もあります
が、それはもう少し赤みがかった色。あやめ色
よりさらに赤みが増すと、杜若色(かきつばた
いろ)になります。花の姿かたちが似ているだ
けでなく、色までも等しく優雅な紫系統です。











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2012年05月31日

しょうぶがさね − 菖蒲重

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菖蒲の葉と花穂を思わす、緑と黄のかさね色


まったく異質に見えるのに、
どこか似ているような……。
直感は、意外にあたっているようです。

このお菓子「尾瀬の春」に添えられた水芭蕉と、
そこに見つけた菖蒲のかさね色のことです。

菖蒲といえば、するりと伸びた剣のような緑葉。
尚武や勝負に通じるため
男子の成長を祝う端午の節句は、菖蒲の節句と言われるほど
たけだけしいものの象徴です。

水芭蕉は、花穂を包む大きな葉が白い花に見える
優雅なたたずまい。

色も、形も、雰囲気も、まったく違うのに
このふたつは同じ、サトイモ科。
粋な菖蒲と、雅な水芭蕉が
無骨に思えるサトイモ科とは
ちょっと意外な気もします。

もしかしたら、人の世も同じかもしれません。
なんとはなしに、ほっとした感覚をおぼえる人。
縁をたどっていけば、気づかされる、意外なつながり。
直感は、齢を重ねた経験のなせる業。
ますます冴えてくるかもしれません。




【菖蒲重】
菖蒲にちなみ、花穂をあらわす菜種色(黄色)と、葉
をあらわす萌黄色(緑)による配色です。お菓子でい
えば、きんとんの2色にあたります。かさねの色目と
いっても菖蒲重は、重ね着で見せるのではなく、布の
表地と裏地であわらす配色。『源氏物語』に「菖蒲襲
のあこめ」として登場する、いにしえの色あわせです。















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2011年05月31日

いろいろ − 色々

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黒みの紅がしめる、とりどりのかさねの色目


梅雨が近づき、わが家の庭では
小さな粒を集めたような
あじさいのつぼみが見られるようになりました。
もう少しすると、七変化のはじまり。

七変化といえば
ヤマトナデシコと口ずさんでしまうのは
ある一定の世代でしょう。

この言葉は、どこかおどろおどろしく
忍術や妖怪が浮かんでくるけれど
あじさいの別称です。

開花して花色を変えていくことから
七化けとも、七変化とも、呼ばれています。

このお菓子は、「七変華(ななへんげ)」。
読みと字をわずかに変えるだけで
やわらかく華やいだ印象のあじさいへと変わります。

色とりどりいただいた下には
黒く紅い蘇芳色。
色のとりあわせで紹介しているので
これが、ひと色、ひと色、かさなったところを
想像していただければ幸いです。




【色々】
淡い紫の「薄色」、黄緑の「萌黄」、「紅梅」、「黄」、
黒い紅色の「蘇芳」、「紅」の6色による、かさねの
色目です。このかさねの色目は、桜躑躅(さくらつ
つじ)とも称して、「桜」「桜萌黄」「蒲桜」を合わせた
こともあるようです。11月ごろから春まで身につけ
られた色。今回は少し遅れての紹介となりました。







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2011年05月22日

ふじねず − 藤鼠

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灰みがかった藤色


うど、たらのめ、ふきのとう。
独特の香りや苦み、渋みがいいと
心から感じられるようになってきました。

味覚と視覚の好みは似てくるのか
ここ最近はとくに
渋みのある色に、きゅーんと引き寄せられます。

お菓子も、こんな渋みのある色に出会うと
本当にうれしくなります。

 渋いという如き、美への標準語を持っている国民は
 東洋にも他にはない
と記したのは、民藝の概念を見出した柳宗悦。

そんなに優れた文化のかたすみに
はたして、いるのかどうか。
たんに好みといえなくもないけれど
このお菓子「花しょうぶ」を見て
しっくりくるのを感じました。

澄んだ渋みといったらいいか。
なんとも、おだやかな気持ちになってきます。




【藤鼠】
灰色をふくんだ、やわらかみのある藤色。江戸後期に
流行した「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)」
のひとつです。茶系と鼠色系それぞれに微妙な色彩
の違いから生まれた多くの色は、粋な色として親しま
れています。藤色にちなんだ渋みのある色には、薄藤
鼠や、灰みがかった青紫色の藤納戸などもあります。









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2010年05月31日

うすふじいろ − 薄藤色




江戸にはじまる淡い藤色


その姿は凛とした女性のようなのに
名前はいかつい「てっせん」です。

鉄仙とも鉄線とも書く、その名。
どうして、そんなに猛々しい名になったかといえば
つるが鉄線のように強いからだそう。

江戸初期に、中国から渡ってきたもので
花に見えるのは、がくの部分です。

6枚のものが鉄線で、8枚のものが風車。
それらを総称して、クレマチスといいます。

このお菓子は、てっせんを模した練りきり。
1枚ごと寄り添わせているのかと思ったら
わずかにつながっていました。

その中には、あたたかい色のくるみ餡。
見ためも、味わいも
ちょっと意外で楽しめます。




【薄藤色】
淡い青みの紫である藤色を、さらに淡くしたのが薄
藤色です。花の色としては平安時代から見られま
すが、色名としては江戸時代からとされています。
似た色に、薄色(うすいろ)と半色(はしたいろ)が
あります。その違いは、薄色はやや灰みがかり、半
色は薄色よりやや濃く赤みがかっているところです。

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2010年05月30日

つつじいろ − 躑躅色




花色をうつした鮮やかな紫みの赤


庭先にあるつつじの
小さなつぼみが日増しに大きくなり
少し口を開いたかと思っていたら
その翌日には、ぱっと花びらを広げていました。

それも、燃えるような花色で。
こんなに、まぶしいほどに咲く花だとは
今まで、あまり気がつきませんでした。

つつじといえば、恋の歌として
古今和歌集に詠まれています。

思いいづる ときはの山の岩つゝじ 言はねばこそあれ 恋しき物を
(思いだす常盤山の岩つつじ、言わないからこそ恋しいものを)

そんな言うに言えない恋心を
ちらりとのぞかせているようなお菓子を見つけました。
「岩根つつじ」です。

五月には、つつじのお菓子が
さまざま並びますが
どれも本来のつつじ色より、やさしい色あい。
鮮やかさをちょっと抑えた
おいしい色になっています。




【躑躅色】
つつじの花のように、紫がかった鮮やかな赤い色。お
菓子の、花色の部分にあたります。平安時代から、か
さねの色目として身につけられた「躑躅」は、黒味がか
った赤紫の蘇芳色と、冴えた黄緑の萌黄色の組み合
わせでした。躑躅のかさねと、躑躅のひと色。同じ色
名でも、時代によってずいぶん印象が異なるようです。

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2009年05月31日

むらさきのうすよう − 紫の薄様




紫より白へいたるかさね色


すずめ踊りもにぎやかな
青葉まつりが終わったかと思えば
5月最終の週末は、心静かに杜の都大茶会。
街なかにある勾当台公園に
13もの流派が設けたお茶席で
お茶とお菓子を味わえます。

その開催日となった昨日、今日は
あいにくの雨となりましたが
多くの方々が出かけられた様子。
こちらは気分だけでもと、おうちで薄茶。
ひとときお茶を楽しみました。

お菓子は雨にぬれたように輝く
「あじさい」です。
歳月はほんとうに過ぎゆくのが早く
先日、東北道で山藤を見かけたばかりなのに
お菓子には、あじさい、花菖蒲と
紫の花をかたどったお菓子が多くなってきました。

そうなると、そろそろ梅雨入り。
しっとりと肌にやさしい季節の訪れです。




【紫の薄様】
紫から、淡紫、より淡紫、白、白へと5色の濃淡でみせる
かさねの色目です。平安時代には、春や、季節を先取りし
て冬に身につけられたといいます。このお菓子は、かさね
ではなく、白餡の上に紫の濃淡がちりばめられた状態で
すが、色名からイメージしていただければと紹介しました。

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2009年05月17日

すずめいろ − 雀色




すずめの頭のような赤茶色


仙台青葉まつりは
ふしぎと雨降りになることが多いのですが
今年も本まつりの5月17日が雨になりました。

前日の宵まつりでは
日中から“すずめ踊り”の団体が
通行止めになった定禅寺通りを
ちゅんちゅんと跳ねるように流し踊り。
子どもから大人まで、はっぴ姿でそろえた衣装を
見ているだけで心もはずんできます。

なぜ、すずめ踊りなのかといえば
伊達家の家紋が“竹に雀”であったことと
踊る姿も餌をついばむ雀に似ていたからと言われています。

お菓子も、この時期だけの「すずめ餅」。
口ばしにあたる濃いめの色が、雀色になります。

そういえば、広瀬川沿いに
にぎやかな雀の声が響いていたのが、ついこの間。
“雀の巣”に“雀の子”といえば、四月の季語。
茶色は秋の色と思いがちですが
雀の色ということで、この時期に紹介しました。




【雀色】
やや明るめの赤茶色。雀の頭のような赤茶色と
する説と、羽のように灰みがかった茶褐色とする
説があります。色名は江戸時代からとされ、『東海
道中膝栗毛』では夕暮れのたそがれどきのことが
「雀色時(すずめいろどき)」と表現されています。

posted by mikk at 22:49| Comment(10) | 皐月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月31日

うのはないろ − 卯花色




初夏に咲く雪の色


白といえば冬
という思いがあったのですが
この時季にも雪色を見ることができます。
夏雪草。
青葉にふりつもった雪のように見える
「卯の花」のことです。

卯の花が咲く月を、卯月というほど
親しまれてきた花。
旧暦の四月をいい、ひと月遅い新歴では
ちょうどいま頃になります。

風流に花が浮かべばいいものを
どうしても先に浮かぶのは
おからの卯の花のほう。
あたたかみのある乳白色を思いがちですが
冴えた乳白色といえばよいでしょうか。
さわやかな色みになります。

この花が咲くころに続く長雨を
卯の花腐しとは、よく言ったもの。
このところの仙台は、しとしと五月雨です。




【卯花色】
わずかに青みのある白。万葉の頃から卯の花は
歌に詠まれ、平安期にはかさねの色目として登場
します。表に白、裏に緑系の色をかさねた、四月に
身につける色目。おなじ白を使った色目でも、秋
に登場する白菊は、赤みのさした白になります。

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2008年05月29日

みずいろ − 水色




平安からつづく涼やかな色


貝合せで遊ぶような
二枚貝をひらいてみると
なかから出てきたのは
初夏らしい色に染まった蟹のお干菓子。

「磯遊び」という銘もかわいらしく
眺めてはすこし動かし
閉じては、また開きをくり返しています。

水色というと、子どもの頃から
なじみのある色で、身近すぎるほどですが
歴史は古く、平安期から使われています。

淡い色あいのせいか
素直すぎる色名のせいか
あまり重みを感じさせません。
かえって同じ色をさす
水縹(みずはなだ)のほうが和の色らしい響き。

それでも水色のほうが一般化しているのは、
わかりやすい色名だからなのでしょう。
長く残るというのは、なにごとも
そういうことなんですね。




【水色】
水のような色を表す、淡く澄んだ緑みの青。
水縹と同じ色とされています。縹色(はなだ
いろ)とは、薄い藍色のこと。水色、水縹ど
ちらも、皐月の最初に紹介した瓶覗(かめ
のぞき)より、すこし濃いめの色になります。

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2008年05月25日

うすいろ − 薄色




最上位の紫ゆかりの色


ふわりと羽織った
きもののようにも見えますが
これは杜若(かきつばた)の花を模したもの。

この形といい、ぼかした色といい
なんとも忘れがたく
ずっと心待ちにしていた「唐衣」です。

杜若といえば、あやめとよく似た花。
なぜ唐衣という銘がついているかといえば
『伊勢物語』にでてくる
歌にちなんでいるからです。

 から衣 きつつなれにし つましあれば
 はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ

句の上に「かきつばた」の五文字を入れたこの歌は
在原業平が、京に妻を残し東下りする際に
遠くまで旅をして来たものよ
と詠んだとされています。

このお菓子にどことなく
都の香りがするのは
業平の郷愁を表してのことかもしれません。


【薄色】
紫の薄い色。聖徳太子が定めた冠位十二階で、
最も高貴な色とされたのが紫。濃色(こきいろ)
といえば濃紫、薄色といえば浅紫(うすむらさき)
を意味したそう。ちなみに杜若色は、杜若の花
色のように鮮やかで赤みのある紫になります。

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2008年05月16日

わかみどり − 若緑




晩春に立つ、松の新芽色


美しいものには棘がある
といいますが
うつむいた可憐な「すずらん」に
毒があると知ったときは
意外な気がしました。

野に咲くけなげな花は
身を守るために毒を宿したのでしょうか。
すぐそばに松葉のような剣をもつ花守がいたら
ゆったり安心して
いられたのかもしれません。

すずらんより少し早く顔を出す松の新芽は
天に向かってまっすぐに伸びる、凛々しい姿。
若緑から深緑へと色を変えても
四季を通して緑のままです。

日本の樹木を代表する松を守役にすれば
ずいぶん心強いことでしょう。

そんな夢物語を浮かばせた
まるみのあるお菓子です。




【若緑色】
淡く黄みがかったみずみずしい緑。とくに、松の
新芽のことを若緑といいます。松は若緑、若松、
老松と色を深めていく常緑樹です。ちなみに、卯
月に紹介した若草色は若緑よりも濃く、如月で紹
介した浅緑は若緑よりくすんだ色みになります。

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2008年05月09日

かめのぞき − 瓶覗




淡くとけゆく藍の色


ある色名を思い浮かべたとしても
色の感覚は、人それぞれ
微妙に異なっていることでしょう。

まだ和の色に興味をもつ前は
まぎれもなくこの色という
一つの明解な答えがあるのかと思っていました。
そんなに数値で割りきれるはずもないのに。

それでも和の色に通じる感覚をと思った時
おしはかる基準にしようと思ったのが
この色でした。
どこまでも淡い藍が、
どのような色で表されているのだろう、と。
ですが、はっきりと自分の中に見いだせないまま。

いつか出あえるのではと
かすかな思いを抱いていたところ
ようやく出あえた、このお菓子。

「水温む」をのぞきこむと
そこには空の青さが映ったような
淡い世界がありました。




【瓶覗】
もっとも淡い藍染の色。一度だけ藍にくぐらせた
色です。藍染は、布を繰りかえし藍瓶に浸すこと
で少しずつ色が深く濃く染まっていきます。この色
名は、ほんの少し藍瓶をのぞいた色という意味に
由来するとされています。一説には、瓶にはった
水に空の色が映ったような色ともいわれています。

posted by mikk at 18:49| Comment(10) | 皐月 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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